21世紀らしくフリー素材を活用(笑)
iPhoneやAndroidでUSB-DACを使用する場合や、Bluetoothレシーバにイヤホン/ヘッドホンを直挿しして音楽を聞く場合に、「音が大きすぎて困る」なんて状況に出くわした事は無いだろうか。
特にボクが好んで選ぶような廉価で小型な機器は、ほとんどの場合において、機器側にボリュームが無いため、ソフトウェアボリュームで音量を絞る事になるのだけど、これもゲインが大きすぎて細かな調整ができなかったり、ビット落ちによる音質の劣化も気になったりと「もうちょっと最大音量が小さくても良いのに」なんていつも考えていたりする。
というわけで、今回はこういった問題の解決に役立つ、抵抗入りのアッテネータケーブルの紹介と、使用上の注意、および好みの物を自作する方法について書いてみたいと思う。
とにかく音がデカすぎる
ボクは普段、Android端末にご存じ「Hifime Sabre 9018 DAC(69ドル)」を接続して、「Neutron Music Player」で音楽を聴いている事が多いのだけど、最近Youtubeの動画音声やGoogle Play Musicをプレーヤーとして音楽を聴く機会もだんだん増えていて、その際に感じてることは、とにかく最大音量がデカすぎて、ほとんど音量を上げられないし、ボリュームの1ステップでの音量の差が大きすぎて、ちょうど良い音量に調節できなかったりして、これはさすがに使い勝手が悪い。
自宅で音楽を聴く際はこの程度で十分な音量だったり、、、
さて、そのような状況が発生する原因なのだけど、これは明白で、このDACが駆動できるヘッドホンの最大インピーダンスが600Ωなのに対して、ボクの使っているイヤホンのインピーダンスが16Ωしかなく、DAC側が明らかにパワーを持て余しているからだろう。
その上、Androidにおける音量調節は、メディア再生の場合は16段階といった具合に、あらかじめ調節可能な段階が決まっているため、600Ωを駆動できるパワーを16段階にしか音量調節できない事になり、先ほど記述したような1ステップの音量差がデカすぎる問題が発生してしまう。
ちょっと調べてみたところ、Android端末では、上記の問題を解決する方法として、ExtraVolumeSimpleというサードパーティー製のアプリを使う方法があるみたいなのだけど、ボクの端末ではうまく動作しなかったのと、色々レビューを見てると不具合もあるみたいなので、あまりこういう外部アプリに依存してると、結局、機種変更やOSのバージョンアップで動作しなくなったりする可能性も高いので、ちょっと個人的には避けたいかなあとも思っている。
なお、iPhone のボリュームも同様に16段階の調整となるのだけど、最大音量を別途指定する(設定→ミュージック→音量制限にて設定可能)とその位置からの16段階調整に変更できるので特にこの問題は発生しない模様。
こんな風にOS側で標準で対応してもらえると助かるんだけどね。(DAC経由でこの調整が効くのかは試してみないとわからないけど)
ちなみに、Neutron Music Playerについては独自ドライバを備えていて、そちらで柔軟な音量調節ができるようになっているためこの問題には遭遇しない。ローカルの音楽ファイルだけ聴いてるのであれば、これで音もいいし十分なんだけど。
市販のアッテネータ(抵抗入り)ケーブル
さて、というわけで、上記の問題を解消するためには、諦めてもう少しインピーダンスの高いイヤホンを使うようにするか、もしくは、イヤホンとDAC(またはBluetoothレシーバ)の間にボリューム付きのケーブルか、もしくはアッテネータ(抵抗入り)ケーブルを挟む事で音量を絞ってやればいいという事になる。
でも気に入ったイヤホンがそんなに都合良くハイインピーダンスなわけでも無いし、世の中一般のスマホなんかは16Ω~32Ωあたりのイヤホンを接続するように設計されているはずで、イヤホンに直挿しするケースも考えると、どうも抵抗入りケーブルで調整した方が使い勝手が良さそうにも思える。
というわけで、市販のボリューム付きの延長ケーブルか、もしくはこういった用途向けのアッテネータケーブルを探してみていたのだけど、需要がほとんどないのか、ほとんど見つからず、ボリューム付きの延長ケーブルはまだ幾つか購入できる物があるのを見つたけど、固定抵抗の入ったケーブルなんかはAmazonでも見つからなくなっているそんな困った状況だったりする。
JVCケンウッド 2008-09-05
なお、上記と同じ物をボクも所有していて、結構活用してたりするのだけど、これもまた今にも廃版になりそうな雰囲気はいったいどういう事なんだろう(笑)
でも、まあ、明らかにこのアイテム、音質的にはそれなりにイマイチなんだろうなあ。ちゃんと評価した事ないけどね(笑)
というわけで、やっと本題。
さて、こんなに入手性が悪いのならば、どう考えても「たいした回路じゃないだろう」とも思われるので、いろいろ探して試すのはやめて、もう自分で使い勝手のよい物を作っちゃった方が早いんじゃないかと思ったのがこの話の発端。
正直、市販のオーディオ用のアッテネータって高すぎるともずっと思っていたりする。
APureSound - Where The Music Is Always Pure - APS Audio LLC. アッテネータって単純な回路にしては高すぎると思う。 |
しかも、自作すれば「音の良い抵抗」を選ぶ事でおそらく市販の物より高音質となる可能性も高く、抵抗値も好みの物が選べるので、狙った減衰量にしやすいというメリットもある事だろう。
うん、なかなかオーディオの話らしくなってきたじゃないか(笑)
アッテネータケーブルを使う際の諸注意
さて、こういったアッテネータケーブルは通常、音質調整、もしくはノイズ低減のために用いられる事が多い。
ここで「音質調整」と書いたのは逆に言えば、こういった抵抗入りケーブルを挟むと、イヤホンの周波数特性が変わってしまう危険がある事を意味している。
ここでは一度、こういった特性変化が何故発生するのか、その点について自分の知識の整理も含めてまとめておきたいと思う。
なお、「BA型イヤホンにアッテネータをかますとイヤホンの特性が変わる」とだけ理解しておけば良いので、特にダイナミック型を使用している方などで特に原因に興味の無い方はここは飛ばしてよいかもしれない。
さて、この周波数特性変化の観点では、特に「BA型」のイヤホンとの相性が悪いと言われている。
これはBA型のイヤホン自体の周波数によるインピーダンス差が大きいために、そこに直列で抵抗値が加わる事により、この周波数による周波数特性が変化してしまう事が原因となっている。
この辺りについて、実際のイヤホンのインピーダンスカーブを用いて次に説明してみたいと思う。
ちょっとラフな図で申し訳ないけど、適当にネット情報を調べてみたところ、例えばBA型である「Etymotic Research ER-4PT」というイヤホンのインピーダンスカーブは以下の図の青線の通りとなっている。(縦軸がインピーダンス[Ω]、横軸が周波数[Hz])
そして、オレンジの線で示しているのがダイナミック型のイヤホンである「SONY MDR-XB90EX」のインピーダンスカーブだ。
これを見るとわかると思うけど、まず基本的なイヤホンの特性として、BA型であるER-4PTは周波数によって、インピーダンスが大きく変動しているのに対し、ダイナミック型であるMDR-XB90EXはほぼどの周波数でも一定のインピーダンスとなっているのが理解できるだろう。
BA型のイヤホンは、そのインピーダンス特性はイヤホンによってそれぞれ特性に違いはあれど、上記のように周波数によってインピーダンスが大きく変化するという特徴を持っている。
さて、ではこのインピーダンスカーブが周波数によって変化するという事が、アッテネータを挟むことにより音質が変化する事とどう関係するのかを考えてみよう。
※注意!!
以下はかなりいい加減な計算をしているので、雰囲気だけ(笑)参考にしていただけると助かります。
ここでは、例えば上記のイヤホンにアッテネータとして直列で100Ωの抵抗を加えたケースを考えてみよう。
ちょっとここまで簡略化して良いのかはわからないけど、単純に考えれば、抵抗からイヤホンまでを含めた回路全体のインピーダンスカーブは、下記の通り、上記のインピーダンスカーブに「+100Ω」した状態になるかと思う。
さて、これが何を意味しているのか。
イヤホンから出力される音圧レベルは流れる電流量に比例する事になる。
そして、ほとんどのオーディオ用アンプは入力信号に比例した「電圧を出力」する電圧出力型(定電圧駆動型)となっており、回路の両端に一定の電圧がかかった状態でイヤホン(およびアッテネータ)は駆動される事になる。
さて、それでは、アッテネータ無しで例えば0.2Vをアンプの出力としてかけた場合を考えてみる事にしよう。
この時、200Hzおよび2000Hzを駆動する際の電流量は、インピーダンスがそれぞれ24Ω、34Ω辺りになるので、
アッテネータ無し 200Hz 電流量 = 0.2[V]÷24[Ω] = 8.33[mA]
アッテネータ無し 2000Hz 電流量 = 0.2[V]÷34[Ω] = 5.88[mA]
が流れる事になる。
さて、ここに100Ωのアッテネータを追加した場合を次に考えてみよう。もし、20~1000Hz辺りの中低音域の音圧レベルをアッテネータ無しと同等にしたいと考えた場合、必要となる電圧は、200Hz付近の回路全体のインピーダンスが124Ωなので、先ほどの「8.33mA」から逆算して、
必要電圧 8.33[mA] × 124[Ω] = 1.0[V]
をかければ良いことになる。さて、ではこの際の「2000Hz」付近を駆動する電流量はいったいどれくらいになるだろうか。
それは以下の通りの計算で算出できるであろう。
アッテネータ有り 2000Hz 電流量 = 1.0[V]÷134[Ω] = 7.46[mA]
さて、先ほどアッテネータ無しの場合の2000Hzで流れる電流量は5.88[mA]であったのが、アッテネータを入れて、0~1000Hz付近の音圧レベルを合わせてやると、その電流量は7.46[mA]まで上昇する事になる。
先ほど、音圧レベルは電流量に比例すると書いた。ならば、これはつまり、アッテネータを入れた結果、「ハイ上がり」になったという事を示している。
以上、具体的な数値で示した方がわかりやすいと考え、かなり乱暴な計算で説明してみたけど、アッテネータを挟むと音質が変化するからくりは実際、だいたいこういう感じなんじゃないかと思っている。
当然、イヤホンは自身の持つインピーダンスカーブに合わせて最適化されているので、アッテネータを挟むと、特に周波数によるインピーダンス差の大きいBA型ではその特性が大きく影響を受ける事が理解できるだろう。
なお、ダイナミック型については、上記に示した通り、フラットなインピーダンスカーブとなるため、抵抗を挿しこんだところで大きな影響は出ないことも同様な考え方で理解できるものと思う。
まあ、個人的には愛用しているイヤホンが安物のダイナミック型で良かった(笑)というところだけど。
アッテネータケーブルの設計はどうすりゃいいんだ?(未解決)
さて、それでは実際にアッテネータケーブルを作るとして、どういう回路を組めば良いのかという話だけど、市販のアッテネータケーブルはほとんどの場合、「L,Rの各chにイヤホンに対して直列に抵抗を入れただけのもの」か、「L,Rの各chに直列に入った抵抗に加えて並列にも抵抗を配置したもの(L型アッテネータ)」のいずれかという事なので、他にも色々あるのだけど、回路が単純なこのいずれかのアッテネータを作成する事で十分かと思う。
なお、アッテネータ周りの情報は、インピーダンス整合とか、「理論的には正しそうだけどボクの用途で意味があるのか不明」みたいな情報が大量にあって、ただボクみたいに「音を小さくしたい!」だけの用途だと情報がノイズまみれで本当に困ってしまった。
というわけで、先ほどちらっとサイトを紹介した「APureSound」では75Ωか、120Ωのアッテネータを販売しているみたいなので、もう難しいことを考えるのはやめて、この辺りを
また、通常のボリュームは構成としては並列にも抵抗が入ったL型アッテネータと似たような構成になっているようなので、何も考えず、こちらの構成にする事にした。
ちなみに減衰量はこれまた難しい数式があるのだけど、そういったATTの計算が簡単にできるサイトが幾つかあるので、そういったものを利用するのが手っ取り早いかと思う。
ATT. 減衰器の計算 ATTCalc. アッテネータ計算機サイトを感謝して活用させていただくのが吉。 |
色々計算してみた結果、結局手元に落ちていた(笑)、BispaのLGMFS抵抗の120Ωと15Ωを組み合わせれば、インピーダンスが133Ωで減衰量が-20dBとなるアッテネータが作成できそうなのでこれを作ってみることとしたいと思う。
HiFimeのDACの出力インピーダンスが2Ωという事と、ボクの普段使っているイヤホンのインピーダンスは16Ωなので、このアッテネータを挟んだ場合の回路図はだいたい以下のようになるだろう。
うーん、イヤホンのインピーダンスを固定抵抗で表現していいのかもわからん(笑)
実際にアッテネータケーブルを作ってみる、、、のは次回(笑)
ああ、BA型のイヤホンがアッテネータを挟むことで音質変化する話を今回考えすぎた(笑)
まあ、実際には音声信号は交流なので、当然抵抗成分だけじゃなくてインダクタンス成分も含めて考えないといけないのでもっと複雑だけどね。
次回、実際にこの辺りのアッテネータケーブルを自作してみて、その使用感や音質の変化について書いてみたいと思います。
いや、しかしたまにピュアなオーディオ理論に触れると難しいなあ。
(追記)ようやく後編を書きましたのでよろしければ是非!!
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