昨今、HuluやNetflix、Amazonプライムビデオという動画配信サービスに契約している人たちも増えていると思う。また、昔と違って、音楽をYoutubeのミュージックビデオなどで聴いている人も増えているんじゃないかと思う。
可能ならば、こういった動画コンテンツを”より良い音で”楽しみたいなんて人も多いんじゃないだろうか。
当然、潤沢に、スペースや資金があれば、巨大なスピーカーを導入し、ホームシアター専用ルームなんて作ることもできるだろう。
しかし、昨今の我々が置かれている住環境からすると、ホームシアターなんかに手をつける人がどれくらいいるだろうか?いわゆる一般的な人たちは「デカいスピーカー」にさほど興味が無いのが普通じゃないだろうか。
また、一方で、昨今はタブレットやノートPCで映画を鑑賞するようなユースケースもどんどん増えていて、コンパクトなシステムでの動画視聴に対するニーズもきっと増えている事だろう。
今回は、そんな状況のブレイクスルーとなりうる、ヘッドホンやイヤホンなどとは一味違う「小さくて音の良いスピーカー」を題材として、特に映画鑑賞を行う場合にどのようにセッティングすれば最大限の音質&臨場感が得られるかについて考えてみたいと思う。
※なお、本エントリはそういったスピーカーの代表とも言える、BOSE Computer MusicMonitorを最近購入した後輩の「これで良い音で映画を鑑賞したいんです」に対する回答メモだったりする。
ミニスピーカーの特性を理解する
まず、何事も素材の特性みたいなものを理解する事は重要だ。以下に、PCスピーカーのようなミニスピーカー(BOSE M2)で高音質かつある程度の臨場感を確保しながら、音声を再生する場合に把握すべき観点についてまとめてみたいと思う。
■前提1:スピーカーの特性
- PCスピーカーは基本”ニアフィールド”で聴く事が前提。
- 小口径スピーカーの高音は指向性が強い可能性あり。それに対し、低音は基本的に無指向性である。
- BOSEスピーカーは低音増強が強く、低音の取り扱いが重要。
- 低音の強いスピーカーは中・高域の音を邪魔する可能性あり。低域にあわせてボリュームを調整すると低域ではちょうど良い音量の場合に、高域のボリュームが小さく、結果低音に音が埋もれて聴こえにくくなる。
■前提2:音源の問題
- 映画鑑賞を想定した場合、映画の音声そのものが「悪い音である」可能性大。
- プレーヤーの音声出力についてイマイチだと感じる場合、内蔵されているDACというデジタル信号をアナログ信号へ変換する部品の性能が悪い場合があり、外付けDACと呼ばれる機器を導入する事で改善できる可能性がある。
※DACは「デジタルデータを音声信号に変換する」特性を改善する。つまり、悪い音はより悪く聴こえるというのも真。
■前提3:ボリュームの特性
- 音の音量はアンプ(もしくはアクティブスピーカー)側で絞るか、PCの音量スライダーで調整する事になるが、このうち、PCの音量スライダーでの調整は、「デジタルデータを削る事で音量を絞る」動作となるため、その結果、音質が悪くなる可能性もあるので、PC側は最大音量として、ミニスピーカー側で絞る方が望ましい。
- 通常、「WindowsのMixer」を通すと音は悪くなる(具体的には高域がカットされてしまい、おそらく影響として明瞭度が下がる)。Windowsのミキサーを迂回するために、ASIOやWASAPI(排他モード)といったWindowsミキサーを迂回する仕組みが利用可能な場合はこれを利用する。
※ただし、一部のDACではその回路にアナログボリュームが組み込まれているので、
A案:DAC側は最大出力でアクティブスピーカー側で音量調整
B案:アクティプスピーカーの音量は最大でDAC側で音量調整
の2案が採用可能。一般的にはA案側で良いが、B案も試してこちらの方が良く感じられるようであればB案を採用、など可能。
音源の重要性について認識する。
さて、上記の通り、それぞれの特性について把握したら、次はこれらを如何に調理するかが重要になるだろう。
この際、特に重要な部分はスピーカーから思い通りに良く聴こえない、なんて場合に、「音源の音質自体がそもそも悪い」なんて場合もよくある事を理解しておく必要がある。
これは、Youtubeなんかで見かける解像度の粗い動画がどうやっても綺麗に再生できないのと同じだ。
そもそもの音源の品質を担保する事は、高音質再生のためには大変重要な課題である事を認識しておかなければならないだろう。
- 可能な限り、セッティングには音質のよいと思われる音源を利用する。この音源が綺麗に再生できるようになる事をまず目指す。※音が悪い音源が「よくならない」のは普通である事を理解する。
- 動画やテレビの音声は「良くない」事もあるので、良く聴こえないからといって、再生機器が駄目とは結論できない。
- プレーヤーは色々あるが、ミュージックプレーヤーについてはWindowsであれば、「AIMP3」というプレーヤーをとりあえずお勧めする。(設定から「ASIO」や「WASAPI」への切り替えが可能)
特性を理解してセッティングを行う
さて、それでは実際にこの「小さなスピーカー」を映画鑑賞に用いる際にはどのようにセッティングを行えば良いか、について実際に考えていくことにしよう。
先にも書いたけど、今回題材に上げたBOSE M2はいわゆるPCスピーカーに分類されるのだけど、PCスピーカーといった特性を考えるのに加えて、そもそも「BOSE社のスピーカー」はかなり低音の強いセッティングとなっているので、先ほども書いた通り、その要素も加えて考える必要があるだろう。
実際、個人的な意見とはなるけど、低音の強いスピーカー全般は、一般的なテレビ音声の再生やセリフ重視の映画の鑑賞には向いていないと思っていて、この低音の取り扱いをどうするかが成功の鍵を握ることになるかと思う。
PCスピーカーとしてのセッティング観点
さて、それではまずPCスピーカー(小型スピーカー)を動画コンテンツの視聴に用いる際に重要となる観点について考えてみよう。
小型のスピーカーはまず、その設計としてニアフィールドにおけるリスニングに最適化されていることを理解する必要があるだろう。そもそもが離れた距離で使用する事を前提としていないので、なるべく自分に近い位置にセッティングしてやる事が重要となる。
具体的には以下のようなセッティング方法になるかと思う。
- PCのスピーカーのように近くで聴くのが最適だと認識し、テレビ視聴で用いる際はテレビの上や横ではなくて、テレビの前に置き、なるべく自身の近くに配置する。
- さらに近づけて、テレビと視聴位置の中間地点あたりに置いても良い。実際、小さなスピーカーは点音源的な鳴り方をするので、聴感的にはまったく問題がない。
- なお、同じ理由で幅もあまり広げない方が良い。1mから広くても1m50cm程度で良いだろう。
このように、小さなスピーカーでは、無理に大きな音で鳴らそうとせず、自身の近くに配置して、適度な音量で鳴らした方が、スピーカーやアンプ性能だけでなく、近隣への音漏れ等の観点からも有効となるだろう。
また、小さなスピーカーの場合は、指向性が強くなる傾向があるため、自分の耳にスピーカーを向けたほうが良い結果が得られるだろう。
- 高域特性を良くするために、スピーカー面が耳に向くようにセッティングする。
- 複数人で見る場合でも、まずは真ん中に一人で視聴位置を決め、高さ、角度(左右・上下)を調整して、耳にまっすぐ音が入るようにスピーカーの置き方を決める。
- 高さを「うまく調整できる」ようであれば、スピーカー面を地面と垂直にした上で、耳の高さにそろえると良いかも。
以上が、小さなスピーカーをテレビや動画コンテンツ用にセッティングするとなり、BOSE社のような低域増幅型ではないスピーカーであればこれで十分だろう。
なお、以下は、ボクが自作ミニスピーカーの実験をしていた際のセッティングとなる。
実際はスピーカーの向こう側にテレビが設置されていると想定すれば、机の上にどのようにスピーカーを設置すれば良いかの参考になると思うので、併せて掲載しておきたい。
低域増強型スピーカーとしてのセッティング観点
さて、次にBOSE社製スピーカーのように、コンパクトながら低域を強調したような鳴り方をするスピーカーを用いる場合、どのようなセッティング方法となるかを考えてみよう。基本的な考慮ポイントしては過剰な低域強調が中高域の邪魔をし、小さなセリフなどが聴こえづらくなる可能性が高く、「如何に低域をうまく制御するか」がポイントとなるだろう。
低域特性を改善するために(ここでは量を減らす)は、スピーカーの音が反射しないように、スピーカーの底面を持ち上げ、壁から離す事が有効である。
低域の音声は指向性が弱いため、これにより、反射による音の濁りが解消され、低域がうまく周囲に拡散される事で、全体の量を減らすことができる。
ミニスピーカーであれば、レンガなどの上に置くだけでも良い結果が得られるかもしれない。
このような配置方法を行うことで、付帯音が減り、一般的には音質的には良い方向に向かうはずであるが、逆に量感が足りない、なんていう場合は、接地面に直接置き、壁に近づけるなどすれば良く、このあたりは好みに合わせて設置の仕方を工夫すれば良いかと思う。
イコライザー&音質補正機能を恐れずに使う
さて、上記はプレーヤー自体の工夫だったけど、小さなスピーカーを使う場合、特にそのプレーヤー等が有する「音質補正機能」もどんどん使用していけば良いと思っている。
なお、「恐れず」と書いたのは、オーディオのセオリーとしてはあまりこういった補正機能は良しとされず、オーディオ畑の人であれば、好んで使わない可能性が高いからだ。
確かに、音楽はイコライザーやプレーヤー独自の補正技術などで、あまり補正をかけると、良くない結果を生むことが多いけど、映画や動画コンテンツの場合(でかつ、小型スピーカーで再生する場合)、割と激しめの補正をかけても結果的には有効に働いていると思える事も多いはずだとボクは思っている。
そういうわけで、再生側の装置やプレーヤーにこういった動画視聴に対して最適化したような補正機能がある場合、一度試してみるのも良いかもしれないと思う。
小さくても音の良いスピーカー
さて、こんな風に書いたところで、「でも、小さくて音が良いスピーカーなんてどれかわからない!」なんて話も出てくる事かと思う。
というわけで、ボクの知っている範囲で小さくてかつ評判の良いスピーカーを幾つか紹介しておこう。
Bose Computer MusicMonitor(M2)
当初、このエントリはこのスピーカーをイメージして書いていたのだけど、BOSEがPCスピーカーのラインナップをより、Bluetoothスピーカー側に寄せて来ているのか、年々品薄になっている印象がある。
とにかくBOSEらしく「この小ささでこの低音!?」という驚きのあるスピーカーとなっている。見た目もやっぱりお洒落だよね。
BOSEの場合はこれか、「Bose Companion 20」辺りが評判の良い、特に小ささと低音を求める人には最適なスピーカーと言えるかと思う。まあ、なんだかんだBOSEのスピーカーは「ドヤ!感」が強いのでインテリア重視の人はこれだろうなあ(笑)
YAMAHA NX-50
上記のBOSEのスピーカーと同じようなサイズ感で、特に最近グイグイと良い評価を聞く事が多いのがこの「YAMAHA NX-50」だ。この手のスピーカーで、人気がありすぎて品薄になっているような話はあまり聞かないのだけど、このスピーカー、とにかく人気で、本来8000円程度で購入できるスピーカーなのに、転売屋が値を釣り上げている状況だったりする。
特に今回のテーマにも最適かと思われるような、ドンシャリの味付けが高く評価されているようで、しっとりした音楽を聴くよりも、元気な音楽や映画の視聴に最適とのレビューコメントも多い。
上記のBOSEのスピーカーが高価で手が届かないけど、小さくても低音の出るパワフルなスピーカーが欲しいという事であれば、こちらのスピーカーを選択肢に入れてみても良いんじゃないだろうか。
FOSTEX アクティブ・スピーカー PM0.3H
こちらは、よりスピーカーらしい形状となっていて、上記2つのスピーカーのように低域を増強するために無理をさせていない分、広い周波数帯域で、余裕のある、自然な音が楽しめるスピーカーとなっている。
もしかすると、少し大きく見えるかもしれないけど、「10(W)×18.5(H)×13(D) cm」というサイズは狭い部屋でも十分置けるサイズかと。
「FOSTEX PM0.3H」はとにかく評判の良いアクティブスピーカーで前モデルからずっとロングセラーになっている。一般の人はFOSTEXって余り聞いた事の無いメーカーかとは思うけど、過去より質実剛健な良い製品を作り続けているブランドなので十分信頼して良いと思う。
なお、この小さなスピーカー用にサブウーファーも出ているので、2.1ch構成とすれば低域も補強されてより良い音が楽しめるかとは思うけど、小さくなくなるかも(笑)
JBL Pebbles
とにかく「音の良いPCスピーカー」という話題になると必ず見かけるのがJBLの「JBL Pebbles」だろう。Amazonのレビューでも1000件をはるかに超えたレビューがついていて、未だ星4.4をキープできているのだから、その実力も本物なのかと思う。
販売している店舗も多く、ヨドバシやビックカメラという店舗でも実際に音を聴きやすいスピーカーなので、是非、一度試聴してみても良いかと思う。
価格帯も5000円ちょいとそのコスパの良さも人気の秘密かと思う。
なお、上記以外のスピーカーでボクが所有かつ絶賛している「TIMEDOMAIN light」というスピーカーも、映画ではないテレビ音声や、アコースティックな音楽を聴く際には、他の追随を許さない性能を発揮するので、興味のある方は以下の記事なども一度目を通していただけるとありがたいです。(ただし、映画には向かないと思うので、ここの紹介からは除外してます)
小さなスピーカーでももっと楽しめるっ!
さて、冒頭で、「BOSE M2」で映画を観るためのセッティングについて相談を受けたことを書いたけど、実際、上記に書いたような3つの観点、
- 音源の音をなるべく損なわないように場合によってはDACの導入を考える
- 小型スピーカーの特性を理解してセッティングを行う
- プレーヤーの音質補正を恐れず使用する
を駆使すれば、ただテレビの横にポン置きするのに比べて、セリフの聴き取りやすさや、全体的な音質の底上げ、および臨場感の増加をきっと実感してもらえるものと信じている。
そしてこれらのセッティングで何よりも大切な映画へのより深い没入感が得られるんじゃないかと思っている。
みなさんも、ぜひ上記に書いたような設置の工夫を試してみて、その効果を実感し、充実したオーディオビジュアルライフを満喫してほしい。
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