前回記事では、激安のaptX-LL対応Bluetoothレシーバ(&トランスミッター)であるHEM-BTRATXを用いて、BT-W2とのaptX-LL接続と、iPhoneとのAAC接続について、それぞれの使用感についてレビューしてみた。
オモロダイブ: aptX-LL接続可能!? 有線イヤホン&ヘッドホンを激安でBluetooth化する①(HEM-BTRATX使用感レビュー) HEM-BTRATXの使用感や雑感などをレビュー。 |
今回はその続きとして、愛用しているFOSTEXのT50RPmk3nの素性、およびBluetoothヘッドホン化するその手順と使用感について書いてみたいと思う。
FOSTEX T50RPmk3nについて
さて、以下がボクが愛用しているFOSTEXのT50RPmk3nである。
さて、このヘッドホンについては、もう、1年も前に購入していて、その音質の素晴らしさにずっとレビューを書こうと思っていたのだけど、「なかなか単なる(変態要素の無い)ヘッドホンのレビューを書く」気持ちになれず、今日まで紹介ができずにいたのだけど、今回満を持して、Bluetoothヘッドホン化の素材として登場させてみる。
なお、ボクがこのヘッドホンの存在を最初に知ったのは、以下の記事を読んだことがきっかけだ。
ヒダヒダ平面振動板で理想の音を、MrSpeakers「ETHER」の秘密を開発者が紐解く - AV Watch 2万のヘッドホンにインスピレーションされて25万のヘッドホン作る人。 |
この記事では、ETHERという超高級ヘッドホンを作っているMrSpeakersというメーカーの創設者に話を聞いているのだけど、このメーカー、なんとこのT50RPmk3nの前身である「T50RP」を自己流にカスタマイズして販売する事から始め、最後にはヘッドホンの独自ブランドを立ち上げたという経緯があったりする。
上記を踏まえて、このヘッドホンの素性をざっと整理すると、以下の通りとなる。
・高級機でしか採用されていない”平面駆動”方式を採用したT50RPを2万以下でFOSTEXが販売開始。
・2014年頃にこのT50RPを改造して10万超のヘッドホンに匹敵させる「FOSTEX T50RP MOD」という遊びが海外で流行。
・「FOSTEX T50RP MOD」機を個人で販売する外人が急増。
・FOSTEXがT50RPでの欠点を克服するべく改良し、正当進化させたT50RPmk3nを販売。←イマココ
そして、1年前、このT50RPに興味を持ったボクが色々調べている際に得た情報がだいたい次のような感じの内容だった。
・T50RPmk3nは当時の標準的な「T50RP MOD」機と音質的に肉薄している。
まあ、浪費には都合の良い情報なので一般論じゃないのかもしれないのだけど、この情報を元に最終的に購入に踏み切ったという事になる。
さて、このヘッドホン、おそらくカテゴリーとしてはモニターヘッドホンという部類に入ると思うのだけど、メーカーも「リファレンス・ヘッドホンとして世界中のスタジオで使用され続ける「RP -Regular Phase- ヘッドホン」の最新バージョン。」と紹介しているように、本当に高域から低域まで、細かい音も良く聴こえ、フラットに良く伸び、リファレンスに相応しいヘッドホンと言っていいかと思う。
T50RP mk3n | FOSTEX(フォステクス) T50RP mk3n ... FOSTEX公式のT50RP mk3n製品紹介ページ。 |
逆に言えば、入力されるソースの音がイマイチであれば、それをそのまま聴かせる事になるので、音源/DAC/ヘッドホンアンプ泣かせなヘッドホンという事になるかもしれない。
でも、まあ音の出口部分の性能が全てのボトルネックとなるわけなので、素晴らしい音源を手前のDAC部、ヘッドホンアンプ部で綺麗に出力した場合に、最高の音を奏でる、こういったタイプのヘッドホンはクラシックからロックまで、端正に聴かせてくれるし、テレビやPC、映画向けといった広範囲な用途でソツなく性能を発揮してくれるので、本当に優秀かと思う。
いや、お世辞抜きでこれは本当に良いヘッドホンだから、2万円くらいまでのヘッドホンを選ぶ際には是非候補に入れてみて欲しいかと思います。
本題のBluetoothヘッドホン化をバリバリ進めるっ!
さて、ではT50RPmk3nを無線化していこう。
前回、Bluetoothイヤホンのタイプ別レビューを書いた際に、ヘッドホンタイプはケーブルストレスから完全にフリーになると書いたけど、特に宅内での使用においては、音質・装着感・機動力の全ての観点でヘッドホンタイプが最も優秀だと思っている。
激安のHEM-BTRATXが実際、T50RPmk3nを十分駆動できる事が確認できれば、その他のヘッドホンにも適用でき、その際にどういう点に気を付ければ良いかが整理できる事と思う。
事前に色々試行錯誤したのだけど、結論として、以下のパーツを用いて、シンプルにBluetoothヘッドホン化する事にした。
使用したパーツを以下に記載する。
・T50RPmk3n本体
・HEM-BTRATX
・片側がL字となっておりコネクタサイズが小さい短いステレオケーブル
・ケーブル結線用のベルクロテープ
・芯に針金が入ったモール
なお、Bluetoothヘッドホン化するにあたって、なるべくケーブルがブラブラせず、レシーバとヘッドホンをコンパクトかつ一体化させる事を目指した。
まず、ケーブル結線用のベルクロテープを以下の通り、小さく丸めて、このベルクロテープの輪っか部分をHEM-BTRATXのクリップ部分に挟んでやる。
これを、T50RPmk3nのイヤホンジャックがある側の上部に出っ張っている金属部分に引っ掛けてあげる。なお、HEM-BTRATXのイヤホンジャックは下向きとして、こちらに3.5㎜ステレオケーブルのストレート側のジャックを挿してやった。
あとは、もうT50RPmk3nのイヤホンジャックに、今度はL字型となっているステレオケーブルのコネクタを挿してやるだけで完成だ。
別の角度から見た完成系はこの通り。ケーブルがもたつく場合は、芯に針金が入ったモール等で固定してあげれば良いだろう。
さて、どうだろう。
公衆の場でこのスタイルで使用するのは、ちょっと勇気がいるかもしれないけど(笑)、自宅での使用であれば、コンパクトでケーブルがもたつく事もなく、機能性としては十分と言えるんじゃないだろうか。
なお、最終的なスタイルはもう一歩
まあ、ここまでやったら、宅内利用でも十分変態に見える事かと思うけどね(笑)
使い勝手&音質などについて(BT-W2との接続時)
さて、では実際の使い勝手について書いていくことにしよう。
なお、以下はCreative BT-W2と接続してPCの音声を伝送した場合のケースについて記載している。
・HEM-BTRATXとT50RPmk3nを組み合わせた場合の音量について
T50RPmk3nのインピーダンスは50Ωとなっているため、前回の16Ωのイヤホンを使うよりも音量が小さくなることを最初から予想していて、実際、この組み合わせで音量が取れるかは試してみる前から心配していたポイントとなっていた。
そして、その結果だけど、この組み合わせの場合、ボクの通常使用している音量だと、音量を上げる事のできる残りのバッファが1割残る程度となっているので、まあ、「ギリギリセーフ」と言ったところになるだろうか。
いずれにせよ、少なくとも、ボクの使い方(宅内の静かな環境で使用)であればこの使い方も音量は十分取れていると言えるだろう。
ただ、時々、電車内とかで爆音で音楽を聴いている人がいるけど、ああいう使い方はできなさそう。
以上の結果からすると、32Ω~40Ωあたりのイヤホン/ヘッドホンがHEM-BTRATXとの相性が良いと言えるのかも。
・通信可能な距離について
見通し5m程度の範囲であれば、ほぼ途切れたり、ノイズが混入する事が無い事を確認。ただし、これも環境に依存する話ではある点に注意。
ただ、壁があったりすると途端に不安定になるので、見通し範囲内のみで用いる事を前提として、通信距離はあまり長くないと考えておいた方が良いだろう。
場合によっては、BT-W2をUSB延長ケーブルなどで延ばして、最適な位置にセッティングするような工夫も有効かもしれない。
・aptX-LL接続における音質について
T50RPmk3nのキャラクターである、「ソースの音を素直に再生する」というのをダイレクトに感じたのがこの部分で、普段ボクはこのT50RPmk3nを真空管ヘッドホンアンプで使用しているので、そこからすると、艶の無い少しザラツキのある音質のように感じた。
(ハイハットの音など、特定の高域が荒れている?)
この辺りが、aptX-LLのコーデックにあるのか、BT-W2もしくはPCのノイズ等によるものなのかはわからないが、この辺りにやはり劣化がある事が高性能なヘッドホンを用いるとよくわかる。
あとは、前回が「低音重視のイヤホン」で今回が「モニタータイプのヘッドホン」なのでそのせいも十分にあり得るけど、低域の量感は多少不足気味のように感じる。この辺りは流石にパワー不足なのかもしれない。
と書くと、音質を否定しているようにも見えるかもしれないが、最高音質で聴くのであればやはり有線に勝るものは無いので、昔から知っているワイヤレスオーディオの音からすると雲泥の差、ヘッドホンの素性の良さのおかげでおそらくその辺りの廉価なBluetoothイヤホン/ヘッドホンの音質は凌駕しているんじゃないかと感じた。
・装着感および使用感など
さすがに、HEM-BTRATXが重量19gと軽量で、その他の部材も大した重量でない物を用いているので、装着感はBTレシーバ装着無しとほぼ変わらない。
左右の重量バランスが変わっている事による違和感も特には感じない。
構成をコンパクトに仕上げているため、取り回しも問題なく、音質の劣化と見た目を抜きにすれば、BTレシーバが装着されている事によるデメリットはほぼゼロと言って良いと思う。
その上で、ヘッドホンのケーブルレス化が実現され、これまでは少し席を外す時にもヘッドホンを外す必要があったのが、つけっぱなしで良くなり、これは試してみると実感できると思うけど、もうメチャメチャ快適だ。
使い勝手&音質などについて(iPhoneとの接続時)
iPhoneとの接続についても前回同様確認してみた。
・HEM-BTRATXとT50RPmk3nを組み合わせた場合の音量について
こちらは、BT-W2との接続時より多少(1割程度)音量が大きく、こちらも音量的にはギリギリではあるが、問題ないレベル確保できる事を確認。
・通信可能な距離について
こちらも、BT-W2より多少離れても問題ない印象があるが同程度(見通し距離5m)を想定しておいた方が良いだろう。
・AAC接続における音質について
こちらは前回記載した通り、AAC接続であるiPhoneの接続の方が、BT-W2のaptX-LL接続よりも多少高音質に感じた。
ただ、まあよく考えると音楽プレーヤーも違うわけなので、一概に言及は避けるが、音質として問題なく、十分高音質と言って良いかと思う。
・使用感など
iPhoneとの直接接続時の使用感だけど、今回色々試している中で一点問題がある事が判明したので言及しておきたいと思う。
それは、Youtubeなどで使用している際に、曲の先頭1秒~2秒程度が切れてしまう問題だ。
この点、iPhone→BT-W2→HEM-BTRATXという接続時には発生しないので、どうやら「送信側であるiPhoneのBluetooth機能の挙動」であるものと思われる。どうやら、無音時にいったん省電力のためにスリープに入り、そこからの復帰&再接続に遅れているようである。
Bluetoothも規格が新しくなるほど、省電力機能が強力になっているので、機器同士の相性で動作は異なるかもしれないが、この組み合わせの場合は上記の問題が発生する模様。
なお、標準のミュージックアプリやGoogle Play MusicでもiPhoneとの直接接続を試したのだけど、こちらは先頭の欠落は発生しない模様。この問題は特定のアプリとiPhoneの実装の組み合わせで発生するという事になるだろう。
音楽主体での使用であれば特に問題とならないかもしれないが、Youtube主体でかつ先頭の音切れを許容できない場合は注意が必要だろう。
うーん、この使い方、音が結構良いだけに、このポイントは惜しいなあ。
その他のヘッドホンのBluetooth化について
今回のTIPS、実際に試そうにもT50RPmk3nも2万円弱と結構な値段がするので、ただaptX-LL対応のヘッドホンが欲しいだけであれば、ちょっと投資としては高すぎるように感じるかと思う。
当然、T50RPmk3nと同じようにヘッドホン側のプラグが着脱式になっているヘッドホンであれば同様のやり方で無線化する事が可能だろう。
まだ、ヘッドホンに関しては検討中で安価にaptX-LL対応のBluetoothヘッドホンを同様の方式で手に入れるなら、以下のようなヘッドホンも安価で音質の評価もそこそこ、かつケーブル着脱式なので、素材としては面白いかもしれない。インピーダンスも32Ωだからちょうど良さそうだし。
ああ、あと超メジャーな激安中華ヘッドホン「Superlux HD681」のケーブルを切断して、強引にBluetooth化してやるというのも面白そうだ。(こちらは着脱式ではないが、片出しなので、加工はしやすそう)
ちなみにこちら、勢いで購入したボクの所有品だけど、T50RPmk3nと比較すれば、全然ダメだけど、3000円以下のヘッドホンとしては巷の評判通り、高域がシャリつくけど、元気の良い楽しい音なので、こちらを素材にするというのもありかもしれない。こちらのインピーダンスも32Ω。
ボクがあまり活用できていない理由は頭頂部のバンド部分にクッションが無いので、頭の形状にあっていないのか、長時間付けているとそこが痛くなるせいなんだけど。素性は良いと思う。
、、、というわけでちょっと試してみた。HEM-BTRATXはヘッドバンド部に固定。
というわけで視聴、、、、あれ?!
なんぞこれめっちゃええがな!(笑)
いや、引き算の美学と言うか、「Superlux HD681」の粗さと「HEM-BTRATX」の粗さがちょうど良いバランスで釣り合っていて、お互いの粗が目立たず、逆に良いところは双方損なわれずに、結構楽しい感じで音楽を聴かせてくれるんだよなあ。
上質なクラシックとかはちょっと向いていないかもしれないけど、ロックやエレクトロ、Youtubeの動画なんかは音量の心配も無いし、これで必要十分じゃないかなあ。
まあ、上記の写真の通り、ケーブルが馬鹿みたいに長いので、ケーブルを短く切断した上で、L型のプラグをはんだ付けしてやる必要がありそうだけど。
少なくとも、5000円以下で購入(構築)できるaptX-LL対応ヘッドホンとしては最強音質と言って良いんじゃないかなあ、コレ。ヤヴァいよ(笑)
ちなみにもう、ケーブルぶった切る事をボクの中では決定しました(笑)
ヘッドホンのBluetooth化はとても有効
さて、今回は、愛用しているT50RPmk3nをHEM-BTRATXで無線化し、その使用感について色々書いてみたけど、とにかくやはり、ケーブルが無くなる事のメリットは絶大であると感じた。
HEM-BTRATXもその音質やiPhone直接接続時における動画視聴時の課題はあるかもしれないけど、価格も激安で、軽量かつ背面のクリップを活用する事で今回のような用途では大変素材として優秀かと思う。
まあ、さっきも書いたけど、音質面を追求する場合は、現時点では有線で追求するしかないと思われるので、利便性&そこそこ高音質を目指す用途だとHEM-BTRATXで無線化する手法で必要十分なんじゃないかと思うので、興味にある方は試してみてはいかがだろう。
以上、まあ、T50RPmk3nの良さをアピールしようと思ったのに、最後に「Superlux HD681」に美味しいところを全て持っていかれるという事件はあったけど、まあオモロいから良しという事で(笑)
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