249ドルでES9038PRO搭載DACが買える?高コスパDAC「UDA38PRO」に驚く。


今回は、以前から「出るぞ出るぞ」とHiFimeが情報を小出しにしていたES9038”PRO”搭載のDACが、2018年の2月に遂に発売された事を受け、ちょっとこのDACについて勢いで書いてみたいと思う。

さて、そのDACというのが「Hifime UDA38PRO DAC」と名付けられた製品で、何とそのお値段249ドル。

Hifime UDA38Pro DAC (ES9038Pro + SA9227)

当初、HiFimeからは300ドルくらいになるかも、というコメントもあったのだけど、その後の努力で50ドルも下げてきていて、これはおそらく現時点で、ES9038PROを搭載したDACとしては最安値と言って良いんじゃないだろうか。

スペックについても後ほど書いてみるつもりだけど、もうこれは、直近でUSB-DAC、もしくは光デジタル入力可能な、お手頃&高性能なDACが欲しいと思っていた人であれば、脊髄反射で即購入してしまって良い値段だと言っていいんじゃないかと思う。




ES9038"PRO"ってつよいの?


さて、ボクが多少鼻息荒く、いつもの遅筆っぷりを払しょくしてまで(笑)このエントリを書いている理由。

それはこのDACが先ほどから書いている通り、「ES9038PROを搭載している」事に他ならない。

そう、とにかく「PRO」というポイントが重要なのである。

DAC関連のニュースを追っている人であれば、ES9018Sという、一時期最高性能のDACの地位を獲得したDACの事は知っている人も多いんじゃないかと思う。

そして、ES9018Sの正当な後継と言われているのが「ES9028PRO」というDACなんだけど、ナンバリングが1つ上がったこちらの「ES9038PRO」はさらにその上位版というように位置付けられている。

つまり、このES9038PROは「ES9018Sの2段階進化版」だと言って過言では無い。

スペックも実際に、ES9018Sが「DNR 135dB (mono) THD+N -120dB」というスペックだったのに対し、ES9038PROでは「DNR 140dB (mono) THD+N -122dB」というようにさらにスペックが引き上げられており、この「DNR 140dB」というスペックだけでもモンスター級のDACチップである事を感じてもらえるんじゃないかと思う。

なお、実際に、そのスペックを実現するために、内部の構造もかなり贅沢な造りになっていて、ES9038PRO自体は8ch DACなのだけど、1チャンネルあたり4つのDACを内蔵しているため、このDACチップは全体では実に32個ものDACを使ってD/A変換を行うという造りになっている。

つまり、「ES9038PRO」をステレオモードで使った場合には、チャンネルあたり16個ものDACを並列動作させているという話になり、このようなこれまででは考えられないほどの贅沢な造りが驚異のスペックを実現しているという話になる。

この点について、ESS社も面白い表現をしていて、「ES9038PROはつまりES9018Sをクアッドで駆動しているのと同じこと」だと言っている。

こういう表現で聞くと、なんともこのDACチップが規格外のスペックであることがわかってもらえるんじゃないかと思う。

249ドルは高いか安いか。

さて、皆さんも気になるのが、この249ドルという価格をどう判断すれば良いかになるかと思う。

これは以下のような記事を読んでもらうと何となく「業界標準の指標」が理解してもらえるかもしれない。

まあ、つまりは上記の記事タイトル通り「9万円の機器にES9038PRO載せちゃうの?」が上記の記事の趣旨だと思うのだけど、この理由は実に明確だ。

それは、このES9038PROを今、個人でAliExpressなどから調達しようとすると、たったIC1個を購入するだけでも85~95ドルかかってしまうからだ。

つまり、こんな高級なDAC ICを搭載していて、それなりにこだわったパーツ選定を行い、ちゃんと高性能DACとして使える製品にまで仕上げているにも関わらず、249ドルという値付けをしているこのUDA38Proはまさに破格値と言わざるを得ないんじゃないだろうか。

なお、本チップをデュアルで登載している高級DACに至っては数十万する事もざらにあって、電源周りの回路や見た目の高級感など、色々劣る点はあると思うけど、それでも手の届かなかったアレに手が届くという面白さからしても、直近に出た製品の中でもダントツに興味深いDACなんじゃないかと思う。

まあ、同じDACチップをデュアルで搭載しているSOULNOTEのD-1なんて28万円(10倍!)もするしね。そういう意味では、この感覚は「1000万のフェラーリと同じエンジンを積んでいる300万の自動車」に価値を感じるか、とかそういうのに似ているんじゃないかと思う。



なお、UDA38Proに近い価格帯で「ES9038搭載」を謳っているDACがあったりするのだけど、それらが採用しているDACはモバイル用に開発された「ES9038Q2M」である事がほとんどだったりする。

こちらのDACチップもかなり高性能と考えて良いんだろうけど、実際のチップの性能としてはES9038Q2Mが「DNR 129dB (Stereo) THD+N -120dB」という事なので、PROと全く別物と考えてよい程の差があると言っていいだろう。

いや、でもこれでもAKMのAK4497というフラッグシップのDACチップが「DNR 128dB THD+N -116dB」という事なので、DACの性能を決めるのがスペックだけじゃないにしても十分ド級といっていいのかもしれないけど。




実際にUDA38Proのスペックを確認する


という訳で値段とチップでハァハァ言うのはこれくらいにして、実際のスペックや構成などについて冷静に見てみよう。

以下がホームーページ上に掲載されているUDA38Proのスペックとなっている。なお主要なところは太字にしている。

Specifications:

Chips: ES9038Pro, SA9227, OPA1622
58 step Digital lossless volume control
Two inputs: USB (type-B) and SPDIF Optical selectable by switch
Optional DC input. Can run on USB power when DC power is not connected
USB input supports all frequency rates up to 384kHz 16/24/32 bit and DSD64 and DSD128
Optical inputs supports up to 192kHz
Asynchronous USB transfer.
DAC is clocked by 80 MHz TCXO
Output: 3.5mm and RCA
DC input: 5-12V
DC min 500mA. 9-12V
DC 1A recommended (not included)
DC input plug: 5.5/2.1, inside pin is positive.
USB Power consumption: 450-520mA without external power, 110-120mA with external power
Size: 10 x 8 x 3 cm

基本的な構成としては、以下の通りとなるだろう。

・DACチップにES9038PROを採用
・USBレシーバ&SPIDF変換、DSD処理にSA9227を採用。
・ヘッドフォンアンプICにバーブラウンが「業界最高性能」をうたうオペアンプOPA1622を採用。
58段階のデジタルロスレスボリュームを搭載。
・入力はUSB&光デジタル入力。USBはAsynchronous対応
・出力はヘッドフォン接続用の3.5㎜ジャックとRCA出力の2系統。
・水晶振動子としてTCXOを搭載。
・オプションとして外部電源入力を搭載。


さて、ボクも幾つかHiFimeのDACを所有しているのだけど、ボクがHiFimeを信頼しているところとして、「コストをかける部分とかけない部分」の線引きが実にうまいなあという点がある。

ボクがこのDACの構成を見て、まず思ったのが、「過去にHiFimeが出してきたプロダクトの成果を十分に活かした構成になっている」という点だ。

実はUDA38Proにはベースとなる製品があり、それがES9018K2Mを搭載した「HiFime UDA18 USB and SPDIF DAC」という製品だ。形状や構成についてはほぼこちらを踏襲しており、DACチップとヘッドフォンアンプをグレードアップした上で回路をマッシュアップしたのが、このUDA38Proという事になるのだろう。

設計を一部踏襲する事により、設計にかかわる大幅なコストカットが実現でき、また、採用するチップ(今回は特にSA9227)を同じとする事で、起こりうる不測の事態に備える事ができるので、このやり方も249ドルという通常はあり得ない価格設定に貢献しているんじゃないかと思う。

実際に購入する際に納得しておく点について


さて、それでは、設計を踏襲している事で発生しているデメリットは無いだろうか。

ボク個人的には、それは2点程あるんじゃないかと思っている。

これは実際のところは、まあ、デメリットというより「意図的なコストカットのための切り捨て」と言った方が正しいのだと思うけど、まず一点目、それは、入出力端子の制約、特に「同軸デジタル入力」を持たない点だ。

通常、光デジタルケーブルより同軸デジタルの方が扱いやすく、より高いサンプリングレートで伝送ができるのだけど、ここが光デジタルのみとなっているために、S/PDIFの入力の上限が192kHz/24Bitまでに制限されてしまう事になる。

そして、2点目。それはUSBレシーバとしてSA9227を採用している事により、PCMの対応が384kHz/32Bitまで、DSDのNative再生がDSD64/128までに制限されている点だ。

ここは、採用するUSBレシーバによっては768kHz/32BitやDSD256/512まで対応させる事もできるわけで、意図的に設計を変更しないようにした事で性能を限界まで引き出してはいるわけではない、という点は理解しておく必要があるだろう。

まあ、実際に使うのかどうかという話でコスト見合いで切り捨てているという事だったりもするので、ここは自身の目的をきっちり認識して購入の判断とすれば良いかと思う。


レビューから読み解くUDA38Proの実力とは?


さて、レビューについても幾つか上がってきているので、こちらからこのUDA38Proが実際の所、どの程度イケてるのかを読み解いてみることにしよう。

まず、HiFimeのレビューは5段階評価となっているのだけど、現時点では全員が最高評価の「5」を付けている。これは249ドルという価格も含めての評価だと思うけど、それでも、皆、満足している状況だと判断して良いだろう。

次に、それぞれのレビュワーが書いている内容をざっと抜き出してみたのが以下。

・9018のDACと比較してより広いサウンドステージ
・(手持ちの他のDACと比較して)低音については控え目。STAXと併せて使う分には問題なし。
・良録音の音源に対しては、透明感と精細感で満足。
・パワーボタンが無いのが惜しい。
・典型的な廉価なSabreチップを搭載したDACサウンドと比較して、より立体的で美しいミッドレンジ
・電源をより良い品質の物にすることでさらに良くなる。
・ニュートラルでスムース、リアルな質感で精細感のあるとても能力の高いDAC。甘く透明感のあるキャラクターで、とても楽しい中毒性のある音。私にとってパーフェクトに近い。
・ロスレスボリュームも複雑な音源でも精細感の欠落なく動作している。ただし、音量を上げるにはある程度ボリュームを上げる必要があるかもしれない。
音質はとてもバランスが良く、低域が強すぎたり、カリカリな高域ではない。音質は私がかつて聴いた中で最もスムースでナチュラルな音質。そして精細感を伴ったダイナミックな音でもある。聴きやすく、とても惹きつけられる。

※原文のレビューはこちらから「REVIEWS」を参照。

これらのレビューを通して見えてくる、UDA38Proの素性だけど、まず全員が表現こそ違えど、同様のことを言っている通り、音質は非常にナチュラルである事がわかる。

あと、低域は控え目という意見もあるけど、ボクの経験上、「正しい録音の音源には超低域はそもそも含まれていない」と思っているところもあり、これは過渡応答特性の良いアンプでも低域が出にくいのと同じ話で、「正確な音」である事を示しているのだと判断して良いかと思う。

一般的に、オーディオで「魅力的な音」という話をする場合には、アンプなどで付け足した音や、スピーカーで生成されるような余計な付帯音などが「魅力という評価」につながっている事が多いと思っているのだけど、このDACの評価はそれと真逆で「正しくて美しく魅力的な音」を評価している人が多いところが実に興味深い。

総じて、評価としては精細感があり、とても聴きやすい立体的で透明感のある音、という風に考えてよいかと思う。

この辺り、おそらくはES9038ProのDACチップ性能の高さ(とHiFimeの基本設計の良さ)がキャラクターとして全面に出てきているのだと思われ、レビュー数はまだ少ないとは言え、普遍的な素性の良さがやはりそこにあるという風に感じている。

正直、もうヤバいくらいに物欲MAX(笑)


うーん、基板も整然として綺麗だなあ。HiFimeってもともとがHiFime「DIY」なので、コンデンサとかもDIYオーディオ然としてて、こだわった感じの物が搭載されているんだよね。

ES9018Sをクアッドだよ?You買っちゃいなよ!」と悪魔と天使とボク自身が先ほどからずっと頭の周りを回っている、、、おそらく皆さんも同じ状況かと(笑)

まあ、品薄になる前に買いますか(笑)


↓物欲に勝てず(笑)、購入しました!!↓


個人的には、I2S接続がデファクトスタンダードになりつつあるラズパイ・オーディオで「USB接続DACの復権」にチャレンジしたい欲求も最近ムラムラあって、このDACが最適なんだよなあ。。。

というわけで、今回はHiFimeから出た新型DACについて紹介してみました。興味があればHiFimeの製品ページもぜひ、確認してみてください!

↓↓↓HiFimeの製品ページはこちらからどうぞ!

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