「もっと夜中でも大きな音を出したいィィ!!」
そんな風に思わず叫びたくなった事は無いだろうか。
少なくとも、そのように思ったことがある人は結構多いことかと思う。
近ごろは、人口の都市部への集中などの影響もあって、「やけに隣人が近い」ような環境に暮らす人が多くなっているように思う。
また、家族がいれば、やはりそこは「公共のスペース」であって、夜は家族の迷惑にならないように静かに過ごす必要があるし、昼間であっても好き勝手に音を出しまくるというわけにもいかない。
特に、昨今は個々のつながりが薄くなっていることもあるのか、「騒音」に対するトラブルも年々多くなっているようなので、余計なトラブルを避けるべく、夜中は静かに過ごしておいた方が無難なのは間違いないだろう。
というわけで、音楽、テレビ、ゲーム、映画、ありとあらゆる「音の出るコンテンツ」を夜に楽しむ際には、音量をギリギリまで絞って、過ごしているという人もきっと多いんじゃないかと思う。
でも、やっぱりちょっと寂しいよね?
というわけで、それならば、もう「音を出したいのに出せない!」なんて不毛なモヤモヤはさっさと捨てて、ヘッドホンでも導入してしまった方が精神衛生的にも良いんじゃないかというのが今回の話題。
そして、どうせ導入するのなら、せっかくなので、可能な限り「高音質を確保」した上での「無線化したワイヤレス環境」を構築して、「ドヤァァ!!」という前向きな気持ちで過ごすのが吉かと思う。
いや、「自宅なのにプライベート空間じゃないってどういう事?」と思う気持ちは、ボクも一人暮らしが長かったのでよくわかるんだけど(笑)
2018年のワイヤレスヘッドホン事情
ボクの学生時代は住宅事情こそ今とそんなに変わらないけれど、Bluetooth機器もまだ出始めという事で、とにかくワイヤレスで音楽を聴くなんて環境についてはかなり劣悪だったように思う。
いや、ホントにボクも同じような理由で赤外線方式(!)の無線ヘッドホンを過去に導入した事があって、充電用のスタンドが送信機も兼ねているから、遅延も無いし、手軽でメチャメチャ便利なんだけど、やっぱり音質の観点ではイマイチだった。
それがここ数年、特にiPhone7からイヤホンジャックが無くなった事も大きいかと思うのだけど、ようやくワイヤレスオーディオにもメジャーな各オーディオ機器メーカーが本腰を入れてきたのか、Bluetoothオーディオ関連の製品がどんどん充実してきている状況となっている。
特に、長年、ワイヤレスオーディオでは「音質」と「遅延」という大きな課題があったのだけど、この点で、技術革新がどんどん進み、遂にそれらの課題を克服した「低遅延&高音質」を実現したワイヤレスヘッドホンが入手できる環境が遂に整ったと言えるだろう。
それを実現した技術がQualcomm(旧CSR)社の「aptX/aptX Low Latency」という技術だ。
遅延との闘い。aptX Low Latency採用製品を選ぶべし!
さて。Bluetooth対応のオーディオ機器自体はそれなりに歴史が長く、過去にもBluetooth対応の「ワイヤレスイヤホン&ヘッドホン」は数多くあった。
しかし、「テレビや映画の視聴」のためにこれらの機器を用いる事は、どうにも耐え難い「音声の遅延問題」があり、Bluetootヘッドホンが長らく流行らなかったのもこの点に大きな原因があったように思う。
この遅延の原因となっていたのが、初期のBluetoothオーディオ機器で伝送のためのコーデックとして採用されていたSBCというコーデックで、このSBCを使用した際の音声遅延が実に「220ms(ミリセック)」と大きいため、これにより、映像から実に0.22秒も音声が遅れる事になってしまっていた。
通常の地デジ放送などでは、1秒間に30コマの映像がパラパラ漫画のように流れているのだけど、その1コマが約33msというわけで220msにもなると、映像のコマ数にして8コマ程度音声が遅れてくる計算となる。
この状況では、まるでいっこく堂の「声が遅れてくるネタ」のごとく、唇の動きや動作と音声がズレてしまい、大きな違和感を産むことになるのは皆さんも想像できることかと思う。
なお、これを一般的には「リップシンク(唇の動きとの同期)」の問題と呼んでいる。
そして、このリップシンクの問題をほぼ解決したと言えるのが、この伝送のために用いられているSBCの置き換えとなる、apt-X、およびapt-X Low Latency(aptX-LL)というコーデック技術だ。
このapt-Xで実現される音声遅延時間は実に70ms(±10ms)。さらにaptX-LLでは40ms未満という低遅延を実現している。
これは、先ほどの映像のコマ数の話で例えるなら、apt-Xで2コマ弱、aptX-LLで1コマ強というところなので、もうほぼ違和感を感じないレベルが達成されていると言い切って良いんじゃないだろうか。
※なお、このaptX-LLというのは、「apt-Xの技術に他の低遅延を実現するためのFastStreamという技術を組み合わせたもの」と理解しておけば良い。
ガチの音楽試聴以外はaptX-LLで良くね?
Bluetoothで使用できるコーデックには上記で述べたapt-X/aptX-LL以外にも、iPhoneで標準コーデックとなっているAAC、上記のapt-Xをハイレゾに拡張したaptX-HD、SONYが推進する高音質コーデックであるLDACなどがあるのだけど、日々の暮らしの中に取り入れるという話であれば、やはり、遅延が最小化されたaptX-LL対応製品を導入するのが良いかと思う。
その他のコーデックでは遅延が気になって(まあ、慣れるとは思うけど)、テレビや映画といった映像を伴うコンテンツを楽しむ場合に、違和感を感じる可能性が高いからだ。
なお、aptX-LL対応製品は無印の「apt-X」対応製品よりかなり選択肢が少ないので、音質や着け心地、見た目などを優先する事として「apt-X」対応製品を選ぶというのも選択肢としては悪くないだろうと思う。
もしくは、プランBとして、後でも書きたいと思うけど、個人的には「高音質コーデックとしてのLDAC&低遅延コーデックとしてのaptX-LL」といったハイブリッドな構成も悪くないんじゃないかと思っている。
いずれにせよ、テレビ視聴や映画鑑賞、Youtube&ミュージックビデオの視聴など、普段の生活で映像をよく見るという人はaptX-LL対応は必須とした方が吉かと。
最適なBluetooth送信機を選ぶ!
広くあまねく、aptX-LL対応製品を紹介する、というのはボクの他のエントリでもやっているし、他の方もやっているのでそちらを参考にしていただくとして、ここではボクが現時点で考える推奨構成について述べてみたい。
まず、Bluetooth送信機について。
多くのメーカーから送信機が出ているのだけど、ここでは以下の要件をみたすものを推奨機器として推したいと思う。
(必須要件)
・aptX-LLに対応している事。
・光デジタル入力を備えている事。
・無音時にミュート状態にならない事。
(オプション要件)
・2台以上ペアリング可能かつ2台同時にaptX-LLが使える事。
さて、上記を満たす可能性の高い製品として以下の2つを推したいと思う。
- TSdrena HEM-BLVTTRE
- TROND BT-DUO II
それぞれの製品のスペック上で判断した上記条件への対応状況は以下の通り。
製品名 | TSdrena HEM-BLVTTRE | TROND BT-DUO II |
---|---|---|
条件 | ||
aptX-LLに対応している事。 | 〇 | 〇 |
光デジタル入力を備えている事。 | 〇 | 〇 |
無音時にミュート状態にならない事。 | 〇(QAに記載有) | 不明 |
2台同時にaptX-LLが使える事。 | 不明 | 〇 |
特に「無音時にミュート状態にならない」という条件は重要で、この条件を満たす製品で無いと、映画やテレビの静かなシーンで一旦音声が無音になってしまい、無音から復帰する際に音声の先頭が欠けてしまう問題が生じるため、大きな違和感を有む事になる。
こちらのミュートについては、基本的には消費電力を抑えるための技術なんだと思うけど、とにかく不自然さを感じる元になるので、機能をオフにしたいところなのだけど、そういったオンオフの機能は備えていない。
色々なレビューを読んでみたところ、「アナログ入力時のみで発生する問題で(音量最大入力となる)デジタル入力では発生しない」可能性も高い、と個人的には考えているのだけど、例えば上記のTRONDのBT-DUO Ⅱでは「カスタマーQ&A」の中で「無音になる」ような記述があるため、不明としている。(この辺り、実際に購入して試した方がいれば、情報共有をお願いしたい)
というわけで、上記の2製品だと、送信機としては今のところの調査内容だとミュートにならない記載がAmazonレビューにあるTSdrenaのHEM-BLVTTREがオススメかも。
ちなみにTSdrena HEM-BLVTTRE側はバッテリーは内蔵していないのでご注意を。(個人的には据え置き用の送信機としては内蔵していない方が使いやすいと思う。)
なお、2台同時接続できる機器を選ぶ理由については後述。
Bluetooth受信機に対する提案。
こちらは簡単。aptX-LLに対応したBluetoothイヤホン&ヘッドホン&レシーバーから好きな物を選べばよいだろう、、、とは思う。
だけど、これまでにそれなりに多くのBluetooth製品を調査して試してきた結論として、やはり自宅利用を考えた場合には、なるべくヘッドホンを選ぶのが、「音の遮蔽性、そもそもの音質、扱いやすさ」といった観点から良いんじゃないかと個人的には思っている。
多くの場合、ヘッドホンのデメリットとして挙げられる「かさばる」問題も自宅ではないしね。
その上で、パターンとしては、
1.aptX-LL対応のヘッドホンを選ぶ
2.aptX-LL対応のボリューム付きレシーバと有線ヘッドホンを組み合わせる
3.aptX-LL対応のボリューム付きレシーバと有線/無線両対応ヘッドホンを組み合わせる
の3パターンを提案したいと思う。
aptX-LL対応のヘッドホンを選ぶ
このタイプの商品については「大手オーディオメーカーから出ているaptX-LL対応製品」が何故か年々少なくなっている状況はあるのだけど、コスパも良さげである程度評価等も出揃っているものが国内で2製品、海外で1製品あるのでこちらを紹介したい。
まず、国内の2製品。それが、「TROND TD-BH01」と「AUSDOM AH3」である。
こちらの製品は両者とも200g強と軽量かつスペックも似通っているので、もう、デザインで選んでしまえば良いんじゃないかと思う。
製品名 | AUSDOM AH3 | TROND TD-BH01 |
---|---|---|
項目 | ||
Bluetoothバージョン | 4.2 | 4.2 |
対応コーデック | SBC, apt-X, aptX-LL | SBC, apt-X, aptX-LL |
バッテリー容量 | 400mAh | 500mAh |
連続再生時間 | 16-20時間 | 20-30時間 |
重量 | 205g | 215g |
その他 | 折り畳み式 |
そして、最近日本でも取り扱いが始まった、海外ではある意味のデファクトスタンダードとなっている「Avantree Audition Pro」も決して忘れてはならないプロダクトだろう。
上記2製品と比較して、バッテリー容量が大きく、またAACにも対応している点がポイントとなる。見た目も結構高級感もあるし、上記の2製品より落ち着いた雰囲気なので、こちらの方が好みという人も多い事かと思う。
製品名 | Avantree Audition Pro |
---|---|
項目 | |
Bluetoothバージョン | 4.1 |
対応コーデック | SBC, apt-X, aptX-LL, AAC |
バッテリー容量 | 550mAh |
連続再生時間 | 最大40時間 |
重量 | 200g |
その他 | 折り畳み式 |
こちら、ボクも愛用しているのだけど、とにかくヘッドバンドの部分と耳にあたる部分が柔らかく、とても装着感が良いのでオススメだといって良いだろう。
※なお、ここ最近、日本のAmazonだとAudition Proの値段が並行輸入業者によって釣り上げられているので、Amazon.comから購入するのがオススメ。日本への配送も可能。
aptX-LL対応のボリューム付きレシーバと有線ヘッドホンを組み合わせる
こちらは過去にも以下のエントリで紹介した方法。というか、今回のエントリも結構この記事の焼き直しだったり(笑)
この方式であれば、
・普段はaptX-LLでのワイヤレスの手軽さを楽しむ。
・「ガチンコの音楽鑑賞」の際には高性能なヘッドホンアンプに有線接続して楽しむ。
という使い分けができるので、結構有効な方法かと思う。
なお、この方法では、光デジタル入力とした場合に基本的にトランスミッター側では音量調節が効かないため、レシーバとして「ボリューム付きのaptX-LL対応レシーバ」を選択しないといけない点は注意が必要だ。
あと、リンク先では「T50RPmk3n(インピーダンス:50Ω、感度:92dB/mW)」を使用した例を書いているけど、Bluetoothレシーバでヘッドホンを駆動する場合は、これ以上インピーダンスが高かったり、感度が低かったりした場合は音量が取れないケースもあるかもしれないので、あまり高インピーダンスのヘッドホンは選ばない方が良いだろう。
なお、最近後継機が出て安売りされているSONYのMDR-1Aとかでも「インピーダンス:24Ω、感度:105dB/mW」だったりするので、注意すればそこまで大きな制約にはならないかと。
aptX-LL対応のボリューム付きレシーバとLDAC対応ヘッドホンを組み合わせる
これは、上記の「有線ヘッドホンを使う」手法の派生形で、有線/無線に両対応しているLDAC対応のヘッドホンを用いる事で、
・普段のテレビ等の視聴時はaptX-LLでの低遅延&ワイヤレスの手軽さを楽しむ。
・外出時や音楽リスニング時にはLDAC接続して高音質な無線環境を楽しむ。
・「ガチンコの音楽鑑賞」の際には高性能なヘッドホンアンプに有線接続して楽しむ。
を実現する手法となる。
ソニー SONY ワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホン WH-1000XM2 : Bluetooth/ハイレゾ対応 最大30時間連続再生 密閉型 マイク付き 2017年モデル シャンパンゴールド WH-1000XM2 N
posted with カエレバ
ソニー(SONY) 2017-10-07
先ほども書いた通り、「大手オーディオメーカーからはaptX-LL対応製品があまり出ていない」状況の中で、LDAC/aptX-LLに両対応した環境を作るためにはこれも有効な手法かと思う。
テレビを無線化する際の注意点
さて、テレビを無線化する場合には上で紹介したトランスミッター(Bluetooth送信機)を使う事になるのだけど、その接続に関しては注意が必要だ。
それは、使用しているテレビが「光デジタル出力に対応しているかどうか」という点である。
あるアンケートによると「一人暮らし世帯の約50%が26インチ未満のテレビを使用」しているという状況もあり、廉価な小さめのテレビだと光デジタル出力を備えていない場合も多いんじゃないだろうか。
もし、光デジタル出力端子が無い場合は、音質的には不利だけど「ヘッドホン端子」にトランスミッターを接続する事で実現は可能だ。
そして、もしBDレコーダー等をテレビに接続している場合には、BDレコーダーとテレビの間に以下のようなHDMI音声分離器を挟んでやることで、HDMI出力からデジタルで音声を取り出す事が可能となる。
値段も3000円弱と大して高い物では無いので、こういった機器を利用する事でデジタル出力を実現するのも悪くないかと思う。
なお、どうせ購入するのであればアナログの音声出力にもこだわりたいという人であれば、DACチップに高性能なPCM5102Aを採用し、回路部にもこだわったNFJの「FX-AUDIO HAC-02J+」がオススメだろう。
NFJストア ヤフーショッピング店
Bluetooth送信機に2台同時接続可能な物を選びたい理由
先ほど、トランスミッターを選ぶ際に「2台を同時接続可能なもの」を条件に紹介したけど、この理由についても書いておこう。
当然、家族や恋人と使用する状況が想定される場合には、2台同時接続ができないとダメだという話にはなると思う。
一方で、一人でしか使用しない場合にも2台の同時接続が可能であることによるメリットがある。
それは「バッテリー切れ時に備えて代替用のレシーバを準備しておく」という使い方が可能になる点だ。
2台同時接続可能なトランスミッターは当然、2台とペアリングした状態を保持できるので、充電を忘れてしまった際にも予備側でしのぐ事で、かなり利便性が高まる事かと思う。
とにかく使おうと思ったら充電を忘れている、なんてこともよくあると思うので、あらかじめ受信できる機器を2台体制に最初からしておくのも悪くないかと思う。
ワイヤレスヘッドホンを導入して「音」に自由になろう!
今回は、過去に色々書いた内容と重複しているところもあるけど、これから新生活を始める人も多いだろうということで「生活の中にフツーにワイヤレスヘッドホンを取り入れる」ための方法についてまとめてみた。
なお、ここでは主にテレビの無線化について書いてみたけど、その他のオーディオからの出力、PCからの出力もまとめて無線化したいという事であれば、以下のような光デジタル切替器(複数入力1出力の物を選ぶこと!)を導入し、それぞれの出力をこちらの機器に入力、出力側をBluetooth送信機につなげてやれば良いだろう。
実際にボクもここ数年、ワイヤレスヘッドホンを導入して、夜中でもガンガン音楽やYoutubeの視聴などを楽しんでいて、とにかくトイレに行くのもお茶を入れに行くのも、いちいちヘッドホンを外す必要もなくて大変便利に過ごしている。
皆さんも是非、ワイヤレスヘッドホンを生活に取り入れて、「音」に自由になっていただければと思います!
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