Bluetoothオーディオレシーバとしては一つの究極形かも?
さて、Bluetoothオーディオに関してはかなり情報収集を続けているボクからすると、現在は、Qualcommが新チップを発表したり、色々と新しい規格が出てきていたりする中、2019年になるまでは、正直、「新しい製品を購入しにくい」タイミングとなっていると思う。
そんなタイミングだという認識があるにも関わらず、Radsone社のEarStudio ES100をその魅力的なスペックから思わず購入してしまったボクがいたりする。
そして、まだ購入してから間もないながら、ボクは今、この小さくて見た目がオシャレでオーディオ的にも楽しい、このコンパクトなプロダクトを手放せなくなってしまっている。
というわけで、今回はこのEarStudio ES100という製品の何に惹かれ、購入にまでいたったかの理由、および実際の使い勝手等について、書いてみたいかと思う。
スペックから見るRadsone EarStudio ES100
このRadsone Earstudio ES100はオーディオ観点でもかなり「バランスの良いスペック」になっているように感じる。
というわけで、スペック周りをざっとコメントしながら見てみることにしよう。
- Bluetoothレシーバ兼ヘッドホンアンプとしての利用
14時間連続再生
対応コーデックとしては、aptX-LLに対応していないのが惜しいけど、特に高音質コーデックであるLDAC/aptX-HDにまで対応しているので、コーデックによる音質の劣化を最低限に抑えることが可能。連続再生時間も14時間となっており、軽量コンパクト設計にも関わらず、長時間駆動を実現している点は素晴らしい。
- USB-DAC兼ヘッドホンアンプとしての利用
本BluetoothレシーバはUSB-DACとしても利用可能となっていて、初期バージョンでは「48kHz/16bit」のみの対応ということだったのだけど、ファームウエアをバージョンアップすることで現在は「44.1kHz/16bit」、Macでは「24bit」にも対応可能となっている。
ES100は、このようにバージョンアップでどんどん機能拡張がなされていて、この点はかなり評価できるポイントとなっている。
- 車載用プリアンプとしての動作
車載AUX用3.5mm出力
カーモードサポート(オートパワーオンオフ)
車載用の機能としてオートパワーオンオフモードを備えてるので、カーオーディオとの親和性も高くなっている。ちなみにボクは使ったことがないので詳細は割愛(笑)
- 適切なデュアル・ドライブ・テクノロジー
3.5mm アンバランス出力を搭載
2.5mm バランス出力を搭載
AK4375aという旭化成のDAC&ヘッドホンアンプチップを左右分として2つ搭載しており、LRのデュアルモノ構成となっている&2.5㎜のバランス出力用ポートが準備されているので、対応したイヤホンを用いる際には、よりパワフルでかつ音の分離の良い音楽再生が期待できる。
なお、AK4375aというDAC-ICについては、後継のAK4376aの方がスペック的には優れていたりもするのだけど、消費電力が増えていたりと、2基搭載するには課題も多そうで、最適解を求めた結果、AK4375aに落ち着いたのかもしれないなあ、なんて個人的には思っている。
- 適切な DCT アルゴリズムが利用可能 (オンオフオプション)
16ビットからハイレゾ24bitへの拡張
RadsoneのDistinctive Clear Technology(DCT)と呼ばれる、独自アルゴリズムに基づいたデジタルノイズを最小限に抑える仕組みが実装されており、音質の向上が期待できる。
なお、このDCTに関しては色々読んだ(↓)のだけど、いまいち何をやっているか不明(笑)なので、ON/OFFで効果の程がわかれば追記したいと思う。
「Distinctive Clear Technology(DCT)はEQやサラウンドのような人工的な効果とは違って、デジタルアーティファクトを完全に除去し、音のすべてのディテールを聞かせてあげます」
- 内蔵アナログボリューム・コントロールが利用可能
この点、かなり便利に感じているので、具体的にどういうメリットがあるかは後述したいと思う。
- 高感度イヤホン利用時のノイズ低減
- 内蔵高感度マイクによるハンズフリーコールが可能
- 出力のRMS値
2.5mm Balanced: 2.2 V
アンプの定格出力。この辺りの話は結構難しいので、以下のSandal Audioさんのエントリなどが役に立つかも(他力本願)
- SNR* (1KHz, 20KHz AES17)
2.5mm Balanced: 110dB (+8.8dBu)
- THD+N* (1KHz, 20KHz AES17)
2.5mm Balanced: 0.0014%
SNRやTHD+Nは後継のAK4736Aではさらに改善されているのだけど、AK4375Aを搭載するES100でも十分なスペックを誇っている。
- 出力インピーダンス
- Bluetooth到達可能距離
- Android / iOSコンパニオンアプリ
2.5mm / 3.5mm 出力モード選択
バッテリー残量表示
アナログ&デジタルボリュームコントロール
10-Band エンベディッド GEQ コントロール(イコライザ)
AK4375a DAC フィルタ選択/ オーバーサンプリング選択
最適化 DCT レベル コントロール
Cross-feed レベルコントロール
マイクゲインコントロール
アンビエントモードのオンオフ
特筆すべきなのが、先ほども少し画面を掲載した、iPhone/Android用のEarStudioというアプリで、こちらのアプリを用いることでES100本体の内部の設定状態を操作して、使い勝手や音質の調整等などを行うことが可能となっている。
そして、このアプリこそが「スマホでBluetoothオーディオレシーバを利用する上でES100を完成形たらしめる」要素となっている。
その理由だけど、多くのBluetoothオーディオレシーバ/イヤホン/ヘッドホンでは、省電力であることが最重要項目となっていることもあり、「液晶表示等のステータス表示を持たない=Bluetoothレシーバ側の状態がわかりにくい」状況となっており、コーデック選択も含めて「いったいどんな状況で音楽を聴いているのかがわかりにくい」という大きな問題がある。
それがこちらのアプリとEarStudio ES100を連携させると、「全てのレシーバ側の状態が把握できる&視覚的にはっきりと音質調整をすることができる」ということができるようになり、これはオーディオ的な機能としては必須かつ強力な機能だと思わないだろうか。
なお、こちらのアプリについては本当に痒い所まで手が届くので、そのあたりについて以下で紹介してみたい。
EarStudio ES100が他のプロダクトより圧倒的に優れていると思う3つの特徴+1
さて、上記はスペックについて紹介したのだけど、上記のスペックの中でも、特にこのEarStudio ES100を「Bluetoothオーディオレシーバの完成形」とたらしめる3つのポイントについて次に書いてみたいと思う。
EarStudio ES100の特徴①:アナログボリュームの使いやすさ
多くのBluetoothオーディオレシーバで採用されているのが「デジタルボリューム」となっており、こちらのデジタルボリュームを用いるとどうしても音量を下げる場合には、「ビット落ち」と呼ばれる「音楽データの間引き」処理が必要となり、これが「音質劣化に直結する」大きな課題となっている。この点、ESS社のDAC ICなどでは、内部では32Bit処理をしているため、デジタルボリュームによる音質の劣化が最小化できることを謳っていたりもするのだけど、以下の資料でESS社も語っている通り、アナログボリュームには絶対的なアドバンテージが未だにあったりする。
ESS - Digital vs. Analog Volume Controls
この問題を解決するために、ES100は内部にアナログボリュームを備えていて、かつ、このアナログボリュームをデジタルボリュームとは別個に操作できるようになっている。
これを用いることで、先ほども書いた通り、「高音質に音量調整が可能となる」だけでなく、ボクの愛用している「DENON AH-C820」などのインピーダンスが低いイヤホンを用いる際に生じる「最小音量が大きすぎてボリューム調整をしづらい」問題も解決可能となっている。
通常のBluetoothレシーバだと、こういった感度が高くてインピーダンスが低いイヤホンはかなり扱いづらいところもあるので、是非同じように「最小音量問題」に課題のある人は参考にしてみて欲しいと思う。
EarStudio ES100の特徴②:音が良い&狙った音を調整しやすい
ES100の音を聴いて、一聴して感じるのが「シルキーかつハイファイな音の良さ」だ。
ボクは多くのESS社製のDAC-ICを積んだ機器を普段聴いている事が多く、旭化成製のDAC-ICはChromecast Audio(AK4430搭載)くらいで聴いている程度だったのだけど(こちらは音質はソコソコ程度)、世代が新しいためなのかRadsoneの調整がうまいのか、EarStudio ES100では「ESS社の解像度が高くてカリカリというのとは異なる、なんともシルキーでハイファイな音」といった印象を受けている。
こちらは例えばiPhoneの音(旧イヤフォンジャックの音)を軸にして話すと、ESS社のDAC-ICを積んだ機器では「iPhoneとは異なる解像度の高いダイナミックな音」と感じるのに対し、EarStudio ES100では「iPhoneの音をさらにシルキーに耳あたりの良い音にグレードアップした音」という風に感じた(LDAC使用)。
あと、今回、初めてLDAC対応のレシーバを導入&LDACの音を聴く体験をしたのだけど、このLDACというのは、他のaptXやAACで感じるような、多少ギスギス&スカスカした感じ(これが圧縮の弊害だと思っている)を感じにくい印象がある。
「音質的に言えば」もしかするとEarStudio ES100&LDAC利用は有線にひっ迫、もしくは超えてしまっていると考えても良いんじゃないかとも思えるほどだ。
少なくともiPhoneのイヤホンジャック出力なんか(それよりも音質的に劣るLightning変換出力は論外)ははるかに上回る出力だと言ってもいいんじゃないだろうか。ずっと有線に劣るBluetooth利用はなあ~、なんて思っていたボクからするとこれは凄い体験だとも言えるだろう。
この辺り、LDACに対応しているAndroid端末も多く出ているので、是非試してみて欲しいと思う。
さて、この素性のよいEarStudio ES100のハードウェアとしての性能をさらに使いやすく、音質を狙いやすい物にしているのがソフトウェアで、ES100本体のファームウェアおよび、スマホアプリとの連携がかなりイケているので、次はこの辺りを書いてみたいと思う。
EarStudio ES100の特徴③:アプリがイケてる&ファームウェア更新でどんどん進化
EarStudio ES100のプロダクトとしての満足度を大きく引き上げているのが、このソフトウェアの実装で、特に「スマホアプリからほぼ完全にES100本体の動作を制御できる」仕様は、他のBluetoothオーディオレシーバと一線を画す、最大の特徴になっていると感じる。
この点、先ほどのアナログボリュームの調整だけでなく、かなり多くの「オーディオ機器としての実装」があるので、詳細はマニュアルを参照してもらうこととして、特徴的な部分を幾つか紹介してみたい。
- 完全に選択可能なオーディオコーデック設定
まず、紹介したい機能が、「本体側で使用するコーデックを完全に選択可能」という点だ。こちらは多くのBluetoothレシーバでも「LEDインジケータで表示可能」となっているのだけど、ここまで明確に利用するコーデックを指定できる機器は無いだろう。
音楽再生中もいったい今、どのようなコーデックでつながっているかが表示されるので、「なんとも精神衛生上心地よい」という気持ちはBlueotoothオーディオレシーバを所有している皆さんであればわかってもらえると思う。
- DAC-ICのデジタルフィルタ&オーバーサンプリング設定を制御可能
こちらはあまりオーディオに興味がない人であればピンと来ないかもしれないけど、DAC用チップにはデジタルフィルタ等の音質調整をするための機能があるのだけど、ここでボクが伝えたいのが「ES100本体のDAC-ICのハードウェア音質調整機能をソフトウェアから調整可能」という部分だ。
この点は、本当に画期的な実装だとボクは感じていて、今後もこのような実装であれば、DAC-IC本来の音質調整機能を自分の好みに合わせて調整できるわけで、このES100のソフトウェア実装が「本当にかゆいところまで手が届く」ものになっている、象徴的な機能だと思っている。
- アンビエントモード(環境音取り込みモード)
他のBluetoothオーディオレシーバにこういった機能実装がある例があるかは不明なのだけど、このEarStduio ES100には特徴的な機能として、周囲の音をマイクから取り込んで、音楽再生とミックスする機能を有している。
世間的にはイヤホンをしながらの自転車利用などは禁止されているとはいえ、街中や電車通勤中でも周囲の音が聞こえないと困る状況は多く、かつ周囲の音のボリュームと音楽のボリュームを別個に制御できるので、使い勝手の観点でも、かなり有効な機能と言えるだろう。
- その他の高音質化機能
その他の高音質化のための機能も色々と実装しており、Radsone独自アルゴリズムによる、「HDジッタークリーナー」「IDTアルゴリズムによるデジタルノイズ低減」「10バンドのイコライザ機能」「省電力/高音質モードの切り替え」など、オーディオ的に必要となる機能が多く搭載されているので、こちらの調整で狙った音質を出しやすいのもES100の大きな特徴だと言えるだろう。
このあたりの設定画面もUIがかなり洗練されていて、説明文も多く挿入されていので、使い勝手からもかなり好感が持てる実装だと言ってよいかと思う。
- ファームウェア更新による大幅な機能アップ
「釣った魚には餌をあげない」ではないけど、通常、製品の機能は後継機でも出ない限りは変わらないのが普通だ。しかし、このEarStudio ES100は違う。
販売開始後もファームウェアの更新が行われており、ファームが新しくなる度に、どんどん改善&新しい機能が追加されているからだ。
この辺りは、Radsoneのサイトを参照するとわかると思うけど、直近でも以下のような音質に関わる機能追加があり、これらをざっと見ただけでも、この製品をRadsoneがかなり重要なプロダクトとみなしていることがわかるだろう。
DACのオーバーサンプリングレート設定機能追加(Ver.1.1.4)
最大音量リミット機能の追加(Ver.1.4.1)
USB-DAC利用時に44.1kHzをサポート(Ver.1.4.1)
MacのUSB-DAC利用時に24bitをサポート(Ver.1.4.1)
Bluetooth5.0への対応(Ver.2.0.1)
今回、ボクが本製品を購入する一つのポイントとなったのが、USB-DAC利用時における44.1kHz対応(48kHzに無駄にサンプリングレート変換されるのが嫌)だったりもするので、購入を検討している人にとっても、また所有した後でもこういった機能拡張が続くというのはとても素晴らしいんじゃないかと感じている。
EarStudio ES100の特徴プラス1!(2019/8/17追記)
そうそう、大事なことを書き忘れていた。
多くの廉価なBluetoothレシーバは、電源オンオフや、何らかの操作時に、「ピッ!」とか「ピピッ!」とかそんな何とも耳障りな電子音が流れたりすると思う。
だけど、このEarStudio ES100は、操作音もちゃんとデザインされていて、電源オン時は「チャ~ラ~ラ~↑♪」、電源オフ時は「チャ~ラ~ラ~ラ~↓♪」と、ってか文字では表現できないけど(笑)、なんとも耳当たりの良い音が流れるので、廉価な機器を使用している時には時々「ビクッ」としたりすることがあるけど(笑)、そういうことが一切なかったり。
こういう、何気ない操作音にまで気を配っているというのが、廉価な機器では中身をOEMで調達していたりするせいで実現できていなかったりするので、ホントに重要なポイントだと思うんだよね。
なお、音量も当然、アナログボリュームと連動してます。完璧。
ちっちゃい!軽い!高音質!つまりは買いだ!(笑)
愛用中のDENON AH-C820との相性は最高。
さて、以上、RadsoneのEarStudio ES100について書いてみたのだけど、正直、満足度はかなり高い。
途中に何度か書いたけど、とにかく「ハードウェアとソフトウェアの融合」が見事で、こんなに「自分の今やっていることがはっきりとわかる」Bluetoothオーディオレシーバは他には無いような気がする。
そういう意味で、このEarStudio ES100はBluetoothオーディオレシーバの一つの到達点と言っても過言では無い気がする。一度手に取ればこの辺りはハッキリわかるのだけど、ちょっとボクの説明でお伝えしきれたかは不安(笑)。
なお、音質については、Radsone社が自身のサイトで英語になるけど、音質評価を行った結果をまとめたホワイトペーパーを公開しているので、興味のある人はそちらも参照してみてみるのもいいかもしれない。なお、「ES100 vs. BTR3 Performance」だとか「 ES100 vs. M0 performance」なんていう競合製品と比較した”露骨な資料”もあったり(笑)
まあ、安い買い物では無いので、購入には躊躇するかもしれないけど、ボクが過去に使ってきたBluetoothオーディオレシーバの中では、音質的にも、機能的にも、オーディオ的に最高と言えるので、是非興味のある人は購入に踏み切るのも良いかと思う。
ボクの個人的な結論としては、ちっちゃくて軽くて音が良くて見た目もいい、そんなBluetooth機器に興味がある人なら、絶対に購入して損しないと思います!!
というわけで以上、今回は購入して驚いたEarStudio ES100について紹介してみました!長文、読んでいただきありがとうございました!
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